FUJI MILESDOVES FLATは街乗りに振ったフラットバーグラベル
FUJIのグラベルバイク「MILESDOVES」には、フラットバー仕様の「MILESDOVES FLAT」があります。
ドロップハンドル版については別に書いたので、ここではFLATがどういう一台なのかを見ていきます。
結論、都市部の街乗りに向いているのは、たぶんこちらです。
フレームもフォークもクロモリ。700×38cの太いタイヤ。
前後キャリアとフェンダーに対応するダボ穴。
この基本骨格はドロップ版と共通で、変わっているのは操作まわりです。
そしてその操作まわりの違いが、街での扱いやすさを大きく左右しています。
変速が「後ろだけ」になった

FLATでいちばん大きい変更は、フロントシングル化です。
ドロップ版はクランクが46-30Tの2枚構成でしたが、FLATは40Tが1枚だけ。
前の変速機がありません。
その代わり、後ろのカセットが11-45Tまで広がっています。
ドロップ版が11-34Tなので、後ろだけでかなり広い範囲をカバーする設計です。
前が1枚になると、街乗りでは確実に楽になります。
変速レバーは右手だけ。「今フロントはどっちだったか」を考える必要がなく、重い・軽いを後ろのギアだけで決められる。
クロスバイクに乗り始めた頃、ギアが多すぎて混乱した記憶がある人は多いと思います。
前3枚×後ろ8枚のような構成だと、組み合わせの数だけ迷いが生まれる。
FLATではその迷いを、構造ごと取り払っています。
さらにチェーンリングにはガードが付いていて、チェーンが外側に落ちるのを抑えてくれます。
裾を汚しにくいという副次的な利点もある。というか、ファッションも楽しみたい街乗り勢としてはこっちがメインか。
11-45Tという広さなら、坂道でも荷物を積んだ日でも足りなくなることはまずありません。シンプルなのに守備範囲は広い。今どきのグラベルらしい構成です。
ブレーキが油圧になった

もう一つの見逃せない変更が、ブレーキです。
ドロップ版のMILESDOVESは機械式のディスクブレーキですが、FLATはTektroの油圧ディスクを積んでいます。
ワイヤーではなくオイルの圧力でパッドを押す方式です。
違いは、指にかかる力です。油圧は軽い力でしっかり止まる。指一本でも制動できるので、長い下りや、渋滞した道での小刻みなブレーキで手が疲れにくい。
そして雨に強い。
ワイヤー式は雨や汚れで引きが重くなることがありますが、油圧は密閉された系で圧を伝えるので、天候による変化を受けにくい。
ディスクブレーキ自体がリムより濡れに強いうえに、油圧でさらに安定します。
街乗りはストップ&ゴーの連続です。
1日に何十回もブレーキを握る乗り方だからこそ、この軽さは毎日の疲れ方に響いてきます。
なお同じフラットバーでも、兄貴分のフェザーCX+ FLATは機械式ディスクでした。
ここはMILESDOVES FLATに分があります。
真っ直ぐではなく、少し手前に絞られたハンドル

FLATのハンドルは、ただの一直線のフラットバーではありません。
スペック上は「トレッキングバー」で、11度ほど手前に絞られています。
両手を自然に前へ出したときの角度に近い形なので、手首がねじれにくい。
長く乗っても手のひらや手首が痛くなりにくい形状です。
幅も620〜660mmと広めに取られています。
ハンドルが広いと、てこの原理で少ない力で向きを変えられます。
だから低速でもふらつきにくい。
ここが都市部で違いを生みます。
信号待ちからの再発進、狭い歩道の脇をゆっくり進む場面、駐輪場で押し歩きする瞬間。
街乗りは、実は低速で車体を扱う時間がとても長い。
その領域での安定感は、ドロップハンドルより幅の広いフラットバーのほうが素直に出ます。
視線の高さも変わります。
ドロップより上体が起きるので、前方の車や歩行者を見渡しやすい。交通量の多い道では、この視界の確保がそのまま安心につながります。
車体そのものの性格は、ドロップ版と同じ

面白いのは、ジオメトリ(車体の設計寸法)がドロップ版とほぼ共通だという点です。
BBドロップは65mm、ヘッドアングルは70〜71.5度、ホイールベースの長さも同じ。
低重心で直進安定性の高い、落ち着いた性格の車体という土台は変わっていません。
つまりFLATは、車体の安定志向をそのまま保ったまま、操作系だけを街向けに組み替えたモデルです。
走りの素性はドロップ版と地続きで、乗り手との接点だけが変わっている。
クロモリフレームのしなやかさも、38cタイヤの当たりの柔らかさも、豊富なダボ穴による拡張性も、そのまま受け継いでいます。
キャリアを付けて買い物に使い、フェンダーを付けて雨に備え、休日は少し遠くまで走る。そういう使い方を想定した骨格です。
都市部を走るなら、こちらかもしれない

ドロップ版とFLAT、どちらを選ぶか。
長い距離を走るときに姿勢を変えられること、向かい風で低く構えられること。
この2点はドロップハンドルの明確な強みで、遠出の頻度が高いならドロップ版が合います。
一方で、街乗りが生活の中心にあるなら、FLATの構成は理にかなっています。
前変速のない気楽さ、指一本で止まれる油圧ブレーキ、低速で安定するトレッキングバー。どれも、信号と交差点と歩行者の間を縫って走る環境に向いた装備です。
クロスバイクからの乗り換えを考えている人にとっても、FLATは違和感が少ない。
ハンドルの形が近く、操作の作法もほぼ同じまま、太いタイヤと積載性、そして油圧ブレーキが手に入る。
クロスバイクで感じていた「もう少し荒れた道も走れたら」「もう少し荷物を積めたら」という不満が、そのまま解決します。
グラベルバイクという名前から、砂利道や林道のための特殊な自転車を想像する人もいると思います。
でも実際に乗る場所は、たいてい通勤路であり、買い物に行くいつもの道です。
日本の街の路面は、思っている以上に荒れている。
太いタイヤと安定したハンドリングは、その現実にちゃんと噛み合います。
MILESDOVES FLATは、その現実に合わせて作られた一台です。
クロモリの佇まいを持ちながら、毎日の道具として気負わず使える。
街で乗るための答えが、素直に形になっています。
グラベルバイクが街乗りにどう馴染むかについては、こちらでも書いています。
https://rhythmtubes.jp/2026/07/29/gravelbike-cityride/
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