「この自転車、何段ですか」。自転車を選ぶとき、つい聞きたくなる質問です。

21段、24段、30段近いものまである。

数字が大きいほど高性能で、速くて、優秀そうに見える。でも、ギアは枚数が多ければ多いほどいいのでしょうか。

クロスバイクに長年乗ってきた筆者の答えは「枚数は本質ではない」です。

走りを実際に決めているのは段数ではなく、ギア比という考え方。
ここを押さえると、自転車の見え方が変わります。

枚数が多い=速い、ではない

まず、よくある誤解を解いておきます。ギアの枚数は「速さ」や「性能の高さ」を直接表す数字ではありません。

枚数が多いことの価値は、速度を細かく刻めることにあります。坂の途中で「もう一段だけ軽くしたい」、平坦で「あと少し重くして伸ばしたい」。

その時々にちょうどいい一段を選べるのは、確かに便利です。

でもそれは選択肢が多いというだけで、枚数そのものが速さを生むわけではありません。

しかも街乗り程度の距離なら、何段ものギアを使い切ることはまずない。

多くの人は、いつも同じ何段かを行き来しているだけのはずです。

筆者のRX3も27段ありますが、日常で触っているのは実質その一部。

だから段数の多さに目を奪われるより、自分が実際に使う領域のギア比がどうなっているかを見る方が、ずっと意味があります。

では、そのギア比とは何か。

ギア比という考え方

ギア比とは、ペダルを一回転させたときに後輪が何回転するかを表す数字です。

計算式はシンプルで、前のギア(チェーンリング)の歯数 ÷ 後ろのギア(スプロケット/コグ)の歯数

ギア比が3なら、ペダルを一周回すとホイールが3周回る。この数字が大きいほど一漕ぎで進む距離が長くなり、「重いギア」になります。トップスピードは伸びる一方、踏み出しは重い。

逆に数字が小さいほど「軽いギア」で、踏み出しは楽ですが、スピードは伸びにくい。

ピンとこなければ、ママチャリの変速を思い出してください。

一番重い段は、グッと踏み込まないと進まないけれど、乗ればスーッと伸びる。
あれが「ギア比が高い」状態です。

一番軽い段は、坂でもクルクル軽く回せるけれど、いくら漕いでもスピードは出ない。
あれが「ギア比が低い」状態。

ギア比とは、要するに「ペダルの重さとスピードの設定値」のことだと思えば大きく外しません。

ひとつ補足を。

実際に出る速度は、このギア比とペダルの回転数(ケイデンス)の掛け算で決まります。

同じギア比でも、速く回せばそのぶん速く進む。回転数の話は別記事で詳しく扱うので、ここでは「ギア比だけで速度が決まるわけではない」とだけ覚えておいてください。

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変速機つき自転車のギア比

クロスバイクやロードバイク、ママチャリといった変速機つきの自転車は、このギア比を走りながら変えられるのが最大の特徴です。

構成はだいたい、前(チェーンリング)が1〜3枚、後ろ(スプロケット)が8〜11枚ほど。この前後の組み合わせを切り替えることで、いくつものギア比を作り出します。

選んだ前後の歯数で、その都度ギア比が決まる仕組みです。

醍醐味は、状況に合わせて最適な一段を選べること。

今の巡航速度に対してどのギアが一番効率的か、これから加速したいのか、坂で脚を温存したいのか。そう考えながらペダルの重さを調整していく、その自由度こそが変速機の本当の価値です。

枚数の多さは、その自由度を支える手段にすぎません。

多段は「刻めること」が値打ちであって、数そのものが偉いわけではないのです。

ピストやBMXなど、固定ギアのギア比

一方、ピストバイクやBMXのような固定ギアの自転車は変速ができません。

だからギア比も一つに固定されます。

選んだ一枚のギア比で、平坦も坂も走り出しも、すべてをこなす。

ギア比を高くすればトップスピードは伸びますが、踏み出しが重くなって走り出しがもたつく。

さらに、高いギア比のまま急坂を登るのはほぼ無謀で、頂上まで自転車を押して歩く羽目になることも珍しくありません。

だから固定ギアでは、走り出しが軽やかで、十分な巡航速度が出せて、ある程度の坂も登れる——そのバランスが取れた一枚を選ぶのが理想です。

変速で誤魔化せないぶん、ギア比選びがそのまま乗り味を決める。

一枚に自分を合わせていく、その潔さが固定ギアの面白さでもあります。

街乗りで具体的にどのあたりがちょうどいいかは、ピストバイクの記事に書いているのでそちらをどうぞ。

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ついでに知っておきたい「スキッドポイント」

固定ギアの世界には、ギア比から派生した「スキッドポイント」という概念があります。

深い話なので、ここでは概要だけ触れておきます。

固定ギアには、走行中に足を止めて後輪をロックし、タイヤを滑らせて減速するスキッドという技があります。

このスキッドは毎回ほぼ同じペダル位置で行うため、ギア比によっては「いつも同じ場所」でタイヤが擦れてしまう。

その擦れる箇所がいくつあるかを示すのがスキッドポイントです。

たとえばギア比3(前48T・後16T)だと、ペダル一回転で後輪がちょうど3回転するので、擦れる箇所は1か所だけ。

同じ場所ばかり削れて、タイヤの一部分だけが早く消耗します。

スキッドポイントが多いほどダメージが分散してタイヤが長持ちする、というわけです。固定ギアのギア比選びには、ペダルの重さだけでなく、こういうタイヤ寿命の観点まで絡んでくる。

奥が深い世界です。

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まとめ:数字より、自分の使い方

ギアは枚数が多いほどいい、というのは思い込みです。大事なのは段数ではなく、自分が実際に使う領域のギア比が、自分の脚と走る道に合っているか。

変速機つきなら、いくつものギア比から状況に応じて選べる自由がある。

固定ギアなら、一枚のギア比に自分を合わせていく潔さがある。

どちらが優れているという話ではなく、考え方が違うだけです。

まずは自分の自転車のチェーンリングとスプロケットの歯数を数えて、ギア比を計算してみる。

そこから「自分はどう走りたいか」を考えると、自転車との付き合い方が一段深くなります。

サグ
サグ
ギアは多いほど偉いんだと思ってました。
マスター
マスター
枚数は選択肢の数でしかないさ。実際にゃ、いつも同じ何段かしか使っちゃいないだろ。
サグ
サグ
……たしかに。重いのと軽いのを細かく行き来してるだけかも。
マスター
マスター
それでいいんだ。大事なのは数じゃなく、自分の脚に合ったギアの組み合わせはどれかってこった。固定ギアなんざ、1ペアで全部やるんだからな。

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