ピストバイクを調べていると、「フリップフロップハブ」という言葉に出くわします。

フェザーのようなシングルスピード完成車のスペック表にもよく載っている。

これがなかなか面白い仕組みで、1つの後輪ホイールで、2つの走り方を使い分けられるというものです。

この記事では、その仕組みとメリット・デメリットを整理します。

サグ
サグ
ネットで見たピストの後輪、両側にコグが付けられるやつらしいんですけど。
マスター
マスター
フリップフロップハブだな。ホイールひっくり返しゃ、固定とフリーを使い分けられる。歯数違いにして、ギア比を変えるのもアリだ。

(固定ギアとは何か、そもそもピストは街乗りで使えるのか、といった基礎は別記事にまとめているので、初めての方はそちらもどうぞ。)

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フリップフロップハブとは:両側にコグを付けられるハブ

ハブというのは、ホイールの中心にある回転軸の部分です。

普通のシングルスピードのハブは片側にしかコグ(後ろの歯車)が付きませんが、フリップフロップハブは、その両側にコグを取り付けられるようになっています。

そして使い方がユニーク。

後輪ホイールを一度外して、左右をひっくり返して付け直すと、反対側のコグが使えるようになる

つまり、ホイールをパタンとひっくり返すだけで、走りの設定を切り替えられる。

「flip-flop(パタンとひっくり返す)」という名前は、この動作から来ています。

一度セッティングしてしまえば、あとはホイールの向きを変えるだけで切り替えられるのが魅力です。

できることは、大きく2つ

フリップフロップハブでできる使い分けは、コグの組み合わせ方によって2種類あります。

① 固定ギアとフリーギアの切り替え

片側に固定コグ、もう片側にフリーギアを付けるパターン。

固定ギア(ペダルと後輪が直結、スキッドなどができる)で走りたい日はこちら、ペダルを止めても後輪が回るフリーギア(普通の自転車と同じ感覚、下りで脚を休められる)で気楽に走りたい日はあちら、と使い分けられます。

ピストの醍醐味も、普段使いの気軽さも、1つのホイールで両取りできる。

② 重いギアと軽いギアの切り替え

両側に、歯数の違うコグを付けるパターン。

たとえば普段は17Tで走り、スピードを出したいときはひっくり返して15T(重いギア)に。

あるいは逆に、普段は重めのギアで、坂が多かったり信号や段差で速度に乗れないエリアを走る日は、軽いギアにひっくり返す。

手間はかかりますが、「その日の用途や走る場所に合わせてギア比を変える」という使い方ができます。

フェザーをはじめ、最近のシングルスピード完成車には、このフリップフロップハブが搭載されているものが多い。

つまり、気づいていないだけで、あなたのピストの後輪も両側使える仕様かもしれません。

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使うときの注意点(デメリット)

便利な仕組みですが、いくつか知っておくべき癖があります。

正直に挙げておきます。

① 少し重くなる

両側にコグが付くぶん、パーツが余計に付くので、車体重量はわずかに増えます。

とはいえ、気にするほどの差ではないことが多い。

むしろ、左右両側に重量物が付くので、ちょっとだけ左右のバランスが取れるのでは、という見方もあります(諸説あり、ですが)。

② タイヤが逆向きになる

これは見落としがちなポイント。

ホイールをひっくり返すと左右が反転するので、タイヤの回転方向も逆になります

タイヤには進行方向が指定されているものがあり(トレッドパターンに向きがある)、逆向きで使うと本来の性能(排水性やグリップ)を十分に引き出せない場合があります。

対策はシンプルで、メインで使う側を、タイヤが正しい向きになるようにセットしておくこと。

日常的に毎回ひっくり返して使い分けるなら向きの妥協が要りますが、「普段はこっち、たまに切り替える」くらいの使い方なら、メイン側を正位置にしておけば問題ありません。

なお、街乗り用の左右対称に近いスリックタイヤなら、そもそも向きの影響は小さいです。

③ チェーンラインがズレることがある

固定コグとフリーギアでは、歯の厚みや取り付け後の位置に微妙な差があります。

そのため、切り替えた後にチェーンライン(前後のギアを結ぶチェーンの直線)がわずかにズレて、異音が出たりチェーンが外れやすくなったりすることがあります。

これを最小限に抑えるコツは、左右で同じメーカーの同じシリーズのコグを使うこと

設計規格が揃っていれば、切り替えによる位置の変化が小さく済みます。

安全に関わる、大事な注意

もう一つ、これは快適性ではなく安全の話なので、しっかり書いておきます。

固定コグを付ける側は、必ずロックリング付きの「固定側(Fixed側)」にすること。

フリップフロップハブには、固定ギアとフリーギアそれぞれ付けれる仕様のものと
両側固定ギア対応のものがあります。

固定側とフリー側でネジの仕様が異なっており、固定側には、コグとは逆向きに締まるロックリング(緩み止め)が付く仕組みになっている。

これがあるおかげで、後ろに踏ん張ってもコグが緩まない。

もしフリー側のネジに固定コグを無理に付けると、ロックリングが付けられないため、後ろに踏み込んだ瞬間にコグが緩んで外れる恐れがあり、非常に危険です。

固定ギアで乗るなら、必ず正しい固定側に、ロックリングと一緒に取り付けてください。ここは見た目や手軽さで妥協してはいけない部分です。

固定側にフリーギアを付けることは可能なようですが、チェーンラインやクリアランスの調整が必要になったり、ネジ山の長さ不足等の恐れもあるため推奨は出来ません。

コグの取り付けや、切り替え作業に不安があるなら、ショップに任せるのが確実です。

現実的な使い方:出先でパッと、とはいかない

「その日の気分で切り替えられる」と書きましたが、正直な現実も伝えておきます。

切り替えには、後輪を外して、ひっくり返して、チェーンの張りを調整して、また取り付ける、という作業が必要です。

工具も要ります。だから「信号待ちでサッと変速」のような気軽さはありません。

現実的なのは、自宅で、その日の用途や走る場所に合わせて切り替えてから出発するという使い方。

「今日は平坦な道をスピード重視で走るから重いギアに」「今日は坂の多いエリアだから軽いギアに」と、出かける前にセットする。

外装変速機のような即時性はないけれど、一度組んでしまえば選択肢が増える。

これがフリップフロップハブの、地に足のついた楽しみ方です。

変速機を持たないシンプルさはそのままに、それでも2つの顔を持てる。

ピストというミニマルな乗り物に、ささやかな遊びの幅を与えてくれる仕組みだと思います。